phony

雑記

無題

一日中寝たり、
一週間外に出なかったり、
しばらく何もしていないと
何かしなきゃという気持ちが押し寄せてくる


何かしなきゃというのは
何か「生産」しなきゃという気持ちだ
絵を描いたり、音楽を作ったり、文を書いたり、
創作しなきゃという焦りが押し寄せてくる


何かしなきゃと焦っているとき、
ツイッターや掲示板でどうでもいいことを書き込んだり
20分程度の動画をいくつも見たりすると
次第に気持ちが落ち着いてくる


何かしなきゃという焦りは、創作の動機になる
創作において大切なのは
勢いとモチベーションだということを
俺はよく知っている


だからこそ、この焦りを
掲示板への書き込みや、
ゲームや動画等の消費行為に充ててしまうのは、
これは、いささか勿体無いと感じる


だが、いざ筆を執り、
ディスプレイに向かってみると
「それが何の役に立つ?」と、
俺を虚無へ唆す、
誰かが背後に現れる


こうやって、
文を書くのが久しぶりになったのも
虚無が原因で、
今日、やっとの勢いで
この文を書いた

久しぶりに、更新できただけでも
俺はえらいので、
自分をほめてあげようと思う

オムライス

昨日は人生で初めてオムライスを作った


包丁とまな板、炊飯器すら家にはないので
米はセブンイレブンで買ったパックのものを使った
ケチャップ、マヨネーズ、牛乳も買った
卵は一昨日作りすぎたホットケーキの残りを使用した


温めたフライパンに油とケチャップを敷き
パック飯を投入
レンジで温めるのを忘れていたためか、なかなかほぐれない
フライパン返しでざっくりと、いくつかの塊にわけて
ケチャップと油を足して弱火でしばらく放置

その間にボウルに卵を二つ入れて、といた
卵を割るのが下手なので、二つともグシャッとなったが
殻は入らないようにと最善の注意を払った
マヨネーズと牛乳を目分量で入れ、
フライパンにバターを乗せ、半分ほど溶けたものをボウルに突っ込む

意識をフライパンに戻し、中火にする
ケチャップを更に加え
塊がなくなるまで適当にほぐす
鶏肉くらい欲しかったな、と思いつつも
次第に香ってくる熱せられたバターの香りに腹を鳴らす
皿に移すときには
これはこれでおいしそうだな、と感じていた
茶碗か何かに詰めて、形をよく見せようか迷ったが
食べるのは自分だけなのに、これ以上洗い物を増やすのも非効率的だと感じたので
フライパンからそのまま浅皿へ移した
その際、少しお皿が汚れてしまったのが残念だった

玉子はおしゃれオムライスにありがちな
半熟にしようと思っていた
フライパンを30秒ほど冷ました後、弱火にかけて、玉子を流す
ジュワーッという音に少しびびる
本来なら大きく混ぜるべきなのだが、忘れてじっと待っていて、気がついたときには真ん中だけ固まってしまっていた
慌てて縁側のゆるい卵を中心に寄せ、全体に火が通ったことを確認し、
ケチャップライスにかける
中途半端に固まってしまっているため
ライスが隠れず、見栄えが悪くなってしまった

なんだか納得いかない出来になってしまった
俺は、気がついたら持っていた卵を割ると、フライパンに垂らした
フライパンの上で適当にとき、弱火にかける
先程の失敗を活かし、ぐるぐると大きく混ぜながら温めた
半熟リベンジは成功し
店で見るような見事なふわオムライスができた


料理をするつもりは無かったため
一人暮らしを始め、半年間インスタントで凌いできた
一昨日、興味からホットケーキを作り
余った卵の使いみちを考えていたら、オムライスになった

料理について、面倒で時間と労力の効率の悪い行いだと思っていたが
うまくできたときは嬉しいし
なにより「作った達成感」を簡単に味わえて
少しだけ料理の楽しさを感じることができた

ただ、バターや乳製品を多く摂取したため
あとで体調を崩してしまった

休日

休日は寝ている
ベッドに横になって 目をつむり
ただ時間が過ぎゆくのを感じる


最近、食べ物が底をついてきた
休日は一日二食
Amazonで買ったカップ焼きそば
茹でるタイプパスタやうどん
夜食や軽食にブタメンやペペロンチーノ
そんな食生活で切り盛りしている


洗濯を最小限に抑えるため
休日の服装は下着のみ
外に出るには服を着なければならないため、買い物はたいてい通販で済ます
家賃や光熱費を払う必要がある時のみ
外に出て、ついでにコンビニに寄る

酒の割材とつまみを買い
店内でハロハロなどを食う
月に一度程度のちょっとした贅沢だ
先日食ったソルティレモンのハロハロは美味かった


家では人と通話をしながら
適当に作った酒を飲み
音楽を聞いたり、動画を見たり
消費するだけの生活をしている

当然、繰り返す生活はマンネリ化し
新たな刺激を求めるようになる
矛先は酒に向いたようで
シェイカー等のカクテル用の道具を揃えたくなっている
まだ酒に詳しくないので
色々と試してみたくなっている


そろそろ、消費するだけでなく
なにか「提供する側」に回り
行動したいものだが
まずはやりたいことを見つけたいな

本でも読みながら
もう少し果報を待ってみよう

ねむり

寝ている間は別の世界にいる
脳内現象だとしても
別の世界で架空の体験をする

なにも、夢に限らず
空想中はそうなのかも


幽体離脱というものがある
金縛りのときローリングするあれだ
幽体離脱の存在を知ってから
一年ほどで初めて成功した

離脱後の世界は
わかりやすく言えばリアルな夢だ
自分の意思で動ける夢
いわゆる明晰夢ってやつの上位互換だと俺は思っている

感覚が起きているときと同じ
土を踏みしめる感覚も
ものを食べた時の香りも味も
時には起きているときよりリアルだ


離脱後の世界を
単なる脳内現象だと捉える人もいれば
完全に別の精神世界だと考える人もいる

俺は半々くらいだ
別世界だとしたらロマンチックだが
俺はリアリストなので錯覚だろうと
せいぜい無意識の領域だろうと考えている

それでも半々なのは
離脱後の世界で会った人に
「ここはこの世とあの世の中間、あの世に行く人が慣れるための場所」
だと、教えられたからだ
夢で教わり、起きてから調べてみると
同じ記述がいくつか見つかって
もしかしたら、なんて期待している


ねむる前に離脱の世界のことを考えると
現世のことを忘れられる
そんな気分になる

【掌篇】バグ

帰り道。

6月の終わり、17時。暗い曇り空。

雨がしとしとと降っている。

 

「ねえ、ゲームってしたことある?」

 

透き通った、高めの女の声。

 

「ある」

 

赤色の傘の下に、黒い横髪が揺れている。

彼女はいつも、唐突な話題を振ってくる。

 

「最近バグが増えてるみたいなの」

 

「何の話だ」

 

「バグの話よ」

 

ぴちゃり、と水たまりの水が跳ねる。

彼女の赤い長靴が濡れる。

俺の靴下と革靴にもかかる。

 

「おい」

 

靴下がじわじわと濡れてゆく。

あの、気持ちの悪い感触が足の裏から伝わってくる。

 

「靴下、濡れると気持ち悪いんだぞ」

 

ふいに彼女が歩みを止める。

釣られて俺の足も止まる。

傘から雨が零れる。

 

「見て、バグ」

 

彼女は傘の外へ腕を突き出した。

指先は目の前の水たまりを指している。

 

「なんだ、アメンボでもいるのか?」

 

「ちがう。よく見て」

 

言われた通り、よく見てみる。

濡れたアスファルト

波のない水面には曇り空が映っている。

 

「ただの水たまりだな」

 

「ばーか」

 

彼女は足元にあった小石をひろうと、水たまりに向かって投げた。

小石は水面に触れたかと思うと、吸い込まれるように"消失"した。

水面は曇り空を映したままだ。

 

「……消えた」

 

足元に落ちていた小石をひろい、俺も投げ入れてみる。

鏡面が水紋で歪むこともなく、同じように小石は消えた。

 

「どうなってんだこりゃ」

 

「バグだよ、バグ」

 

差している傘に雨粒があたり、パラパラと音を立てている。

思えば、雨が降っているのにかかわらず、水面には波一つなく、曇り空を映したままだ。

そもそも「水」面なのかすら定かではない。

 

傘を閉じ、水たまり(?)につっこんでみる。

見た目は1cm程度の深さしかないのに、底がないようで取っ手まで入る。

手まで入れるのは怖いので、傘をギリギリまで入れて引き抜く

傘は抵抗もなくすんなりと抜け、濡れた様子はなかった。

水たまりならできる水紋もなかった。

 

「こんなのがそこら中にあったら危ないな」

 

彼女は何事もなかったかのように平然としている。

 

「バグはいろんな形で現れるのよ。これはほんの一例」

 

どうやら、他にも変な現象はあるらしい。

 

「他にはどんなバグがあるんだ?」

 

「学校が半分ずれてたり、今日は理科室のあたりが空隙になってたよ

 この付近に限った話じゃないだろうね」

 

「理科室が?」

 

全く気がつかなかったが、学校でも変な現象が起こっているらしい。

誰も騒いでいなかったのが不思議だ。

 

「……日本中で、その、バグは起きてるのか?」

 

「さあね、世界中で起きてるんじゃない?」

 

バグ。

空間が壊れていたり、NPCが狂ったような動きをしているのは雑なゲームでよく見てきた。

それが現実で、しかも世界中で起きているのだという。

 

とても信じられない話だ。

そもそも、怪奇現象がそんなに起きていたら、世界中で大騒ぎになっているはずだ。

 

「お前、からかってるだろ」

 

「この水たまり見ても、からかってるように思う?」

 

「……いや、認めるよ。だが」

 

ふっ、とあたりが静まり返る。

雨が止んだのかと思い、傘を閉じ、あたりを見回す。

水滴が、宙で浮いている。

時間が止まったかのように、全ての雨が動きを止めていた。

 

「お、おい、これも……バグなのか……?」

 

「んー、処理が重いのかも」

 

彼女は、さも見慣れた様子で、落ち着いてあたりを確認している。

俺は雨音だけでなく、彼女の声以外の音が、一切しないことに気がついた。

車の音も、風の音も、地面と靴が擦れる音もしない。

あたりは完全な静寂に包まれていた。

 

「もうダメみたいだね、この世界も」

 

「だめって、どういう……」

 

「情報が増えすぎたんじゃないかなー、この世界のどこかで」

 

少し雨が動いたかと思うと、小刻みに停止し、また動く。

ちょうど、スペックの低いパソコンでオンラインゲームをしている時のようだ。

カクついているという表現がぴったり合う。

 

「こんなおかしなことが起きているのに、なんでニュースにならないんだ

 世界中で起きているなら大騒ぎになっているはずだろ」

 

NPCはバグに気がつけないものよ」

 

NPCはバグに気がつけない。

ゲームの中なら当然である。

どんなにおかしなバグがあっても、ゲームの中の人間は平然としている。

 

「そ、それじゃあ、どうして俺たちは……」

 

「ふふふ、私の時もそうだったよ。

 

 みんなおかしな動きをしているのに、私だけ普通に動けるの」

 

私の時。

彼女はそう言った。

 

「……お前は」

 

「この世界はもうダメ。

 この世界にこれ以上とどまっていても仕方ないよ」

 

 

「お前は、どこから来たんだ?」

 

彼女はにっこりと微笑んだ。

 

 

「君は、私と一緒にくる?」

創作

創作とは、架空の世界を生み出すことだ
世界観をつくり
キャラクターをつくり
盤上の人々を
創作者の意向、定めた運命によって
物語の最後まで導くのが創作だ


物語をつくる途中で
ペンを止めれば世界は止まる
書かれていない先の世界は
物語の中に存在しない

物語の中の人々が知性を持つようになるには
宇宙ができて数億年
地球ができて数億年
生命が生まれ数億年
最初の人間が生まれて数万年、時が経たなければ
知性を持った生命は生まれない
創作の中の宇宙は
俺達の宇宙と同じだ


創作の世界は止まる
物語が終われば止まる
商人も
子どもも
川も海も風も、宇宙も止まる
完全に世界が停止する
数億年かけてできた世界が
俺達の世界と同じ宇宙が、全て止まって動かなくなる


俺の住むこの宇宙も
誰かの手によって書かれた
創作の世界の一つだとしたら
主人公が物語を進め
最後のページまで時が流れれば
俺達の宇宙も完全に止まるのか

自分という意識を持った
一人の人間がこの創作の主人公だとしたら
その役目を終えたとき
世界は止まるのだろうか

残された人もからの空も地球も
宇宙も止まってしまうのだろうか

笑う

昔に比べて笑わなくなったのに気がついた
とは言うものの
笑うときは普通に笑う

笑わなくなったというのは
単に、笑う機会が減ったということだ

ただ、同じくらいに
人と話す機会が減ったと思う


楽しいとき
嬉しいとき
安心したときに人は笑う

笑う機会が減ったのに気がついたのは
周りが騒いでいるのを「うるさい」と感じるようになったとき
前はこんな風に騒いでいたなと
あまり笑わなくなったなと
気がついた

笑いには安心させる作用がある
安心したときに笑うのだから
笑うと脳が安心したように錯覚する

感情が先立って行動するのは
感覚的にも
直感的にもよくわかる
楽しいから笑うのは
よくわかる

ただ、脳は行動からも
感情を生んでいるようだ

例えば
悲しいと 涙が出るのだが
涙が出ると 悲しくなるらしい

やる気の原理も同様で
布団にもぐって
やる気が出るように祈っても
脳は寝る体制に入る

やる気を出すには
ペンを持ち
机に向かうのが一番良いらしい
実際、やってみるとよくわかる

楽しいとき
嬉しいとき
安心したときに笑うのだから
同様に
笑えば、楽しくなるのだろう


騒いでいた女たちは
なにか不安で
不安を紛らわすために
無意識に笑顔をつくって
安心しようとしていたのだろう


俺が笑わなくなったのは
安心が一番の敵であり
不安に冷静な対応をするのが
現実的な対応だと
思うようになったからだろう

そう思うようになってから
自然と一人で行動する機会が増えた